野宿したくない人が
今、日本では競争が激化し、貧富の差が拡大しています。多くの人が失業の恐怖を感じています。昨年は松下、東芝、富士通、日立などが何万もの人を解雇すると発表しました。毎年3万人もの人が自殺し、原因の多くが失業や仕事の行き詰まりだと言われます。
今年も失業者は減っていません。仕事を失い、家賃を払えなくなると、住むところを失います。住込みの仕事だったり、会社の寮に住んでいると、失業はそのまま家を失うことになります。
大阪市の調査では市内で野宿している人は1996年には約3600人でしたが,1998年には8600人に増え、現在では2万人位に増えています。神戸でも97年から急激に増えて、いまは500人近い人が公園等で暮らしています。全国では3万人以上の人が、世界中では10億の人が住むところに困っています。
よく、ホームレスは「怠け者」だとか「好きでしている」とか言われますが、そうでないことがこの数字からも判ります。突然野宿の好きな怠け者が増えるわけはないのです。
一旦、仕事と住まいを失うと、元に戻るのは極めて困難です。ハローワークで求職しようとしても、住所がなければ、求職票も作れず、相手にされません。
困って、福祉事務所に行くと、どこかに住む所を決めてからきなさい、と断られるのが普通です。(灘駅の傍に更生援護相談所という宿泊施設はあるのですが、食事が出ないし、蚤やダニがいるからので、行きたくないと言う人も少なくありません。)
野宿しても、飯は食わなければならないから、粗ゴミからリサイクルできるものを見つけて売りに行ったり、アルミ缶を集めて売ったり、苦労しながら生活しています。
それでも、偏見の目で見られます。どことなく普通の人でないと思う人が多いのです。お母さんが子供に「勉強しないとあんなになるよ」と言ったり、公園にいると「怖いから、追い出して欲しい」と市に訴える人もいます。
若者が野宿している人を襲撃する事件が多発しています。最近東村山で中学生達が野宿している人をたたき殺すと言う事件がありました。図書館で騒いでいるのを注意されたのが原因でした。「人生の敗北者に注意されたくない」といったそうです。
野宿している人もたまりかねて、自衛のために棒を用意したりします。下手をすると、子供達が怪我をすることになります。98年の西宮では襲撃した子供が刺し殺されるという事件がありました。互いに理解しあえる教育、襲撃をなくす教育、住む家を失った人に対する偏見をなくす教育が必要です。
大人の偏見が、偏見を持った子供を作るのではないでしょうか。
同じ対等な人間同士として、出会い、理解し合えたらと願っています。
(2001年の「灘チャレンジ」で配付したチラシより)